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サンボアのインベロ4(最終回)

インベロ

サンボアそんな古き良き時代から数十年経った西宮北口駅周辺は、すっかり様変わりしてしまった。

サンボアのあった駅南の三角地帯はもう無い。マイケルのようにリッチになったら、レトロなあの三角地帯をネバーランドではなく、昭和レトロ風のテーマパークにしてみたい。

妄想は置いておこう。

風の噂で、おばちゃんは亡くなったと聞いた。なんか青春の1ページがちぎれて無くなったような気がした。

私がグラスをやり始めて24年目になるが、その間、何度となく「インベロ作って」って頼まれ、その度にインベロ作りにチャレンジしてきた。しかしそう簡単には再現出来ず、もうほとんどあきらめていた。

3年ほど前の年末、高校時代からの友人達とグラスで忘年会をした。その時に、また

「インベロ作ってくれや、インベロ食べられるんやったら一杯1000円払ってもええわ」

と言われた。

「そんな簡単にできるか」

って言って、その時はそれで終わった。

年が明け、お正月、お金を使ってるので、正月明けはお店が暇になる。それでなくても冬は暇。

そんな時ふと、ある人から

「カレー、あなたはカレーがいい」

と言われたことを思い出した。

うちにはドライカレーやグリーンカレーなど、自信のあるカレーメニューがある。そのときは「それを言ってるのか」と思ったが、

「インベロ作ってくれ」

の言葉がふと頭をよぎって、急に【使命感のようなもの】が湧いてきた。

そこから毎日毎日、本当に毎日・・・私の夜のまかないは実験に失敗したインベロ。いろんな香辛料を買い足し、表を作ってグラム単位で調整し、記憶をたどって近づけていった。

サンボアのインベロを完全再現した当店自慢メニュー「思い出の北口カレー」そして自分としてまあまあのものができると、報徳出身の友人やインベロをよく知る友人に連絡して試食してもらって意見をもらった。

そして、ついにおおよそ納得いくものが完成した。でもまだ進化の途中、決して100点は取れない。

そんな北口カレーなのだが、仁川出身のお客さんは食べた瞬間に涙を浮かべてくれた。そして進化の為のヒントを置いて行ってくれた。

だからメニュー名は

「思い出の北口カレー」

「インベロ」の名前はあえて使わない。

思い出代込みで1,000円。

なんじゃー高いやんけーって言われるでしょう。おばちゃんにも怒られそう。

サンボアのおばちゃんの魂を伝えたい「肉じゃがカレー」だからその代わりに儲けの無いメニューを捧げることにした。

それが「肉じゃがカレー」

お腹減らした学生さんや財布が寂しい人に、おばちゃんの魂を伝えようと思った。

もちろん残すのはタブー。きれいに完食で500円、残すと750円。

思い出に浸りたい方は「北口カレー」。そうでない方は「肉じゃがカレー」をどうぞ食べにきてね。
(終わり)

▼サンボアのインベロ(全4話)




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